抄録
硝酸態窒素施用による根腐病発生低下の原因をin vitroで検討した。その結果,硝酸態窒素(Ca(NO3)2・4H2O)は宿主の感受性よりはむしろ病原菌の挙動に対して影響を及ぼすことが判明した。硝酸塩水溶液中の硝酸態窒素濃度200ppm以下ではAphanomyces cochlioidesの2次遊走子の宿主胚軸部への集積,感染は観察されたが,300ppm以上では全く認められなかった。高濃度域におけるこのような現象は2次遊走子の被のうおよび死滅に伴う感染ポテンシャルの低下に基づくものであった。また,高濃度域では菌糸起源の遊走子の生成は著しく阻害された。次にA. cochlioidesの2次遊走子の運動性に及ぼす硝酸塩水溶液の浸透圧の影響を検討した結果,運動性の低下は浸透圧の影響ではなく,硝酸塩のもつ毒性によることが示唆された。すなわち,対照の糖溶液では1.50barでほとんど被のう化し,死滅は認められなかったのに対し,硝酸塩水溶液では0.75bar (N:約300ppm)でほとんど被のう化し,さらに1.00bar (N:約400ppm)以上で死滅は著しく増加した。