抄録
1985年6月下旬,京都府綾部市の京都府農業総合研究所薬用植物園で,ヤブカンゾウに褐点∼黄色条斑症状株が発生した。本病は11月中旬まで発生が続き,初め葉の両面に褐色,小型の斑点を形成し,後に鮮黄色条斑を呈し,やがて葉先から褐変枯死する。通常,罹病葉上では病原体は認められなかったが,湿室中で病斑上に密に重り合った菌糸からなる子座と棍棒形∼亜円筒形の分生子形成細胞及びその頂端部に楕円形∼紡錘形,無色,平滑,単室の分生子を出芽的に形成した。分離菌はヤブカンゾウ,ノカンゾウ,ホンカンゾウに有傷接種で病原性を示した。ノカンゾウにも自然発病が認められ,分離菌はヤブカンゾウ分離菌と同様の病原性を示した。単胞子分離菌株はPDA培地上で最初はクリーム色,酵母状を呈し,後に白色菌糸状となり,さらに暗褐色∼黒色となる。生育温度は8∼30C,生育適温は20∼24C付近である。分生子は楕円形∼紡錘形,無色,平滑,単室で出芽的に形成され,しばしば酵母状の増殖をする。以上の形態的特徴とカンゾウ類に対する病原性から,本菌をAureobasidium microstictum (Bubák) W.B. Cookeと同定し,病名として葉枯病を提唱する。