岡山県に発生したチュウゴクナシの鴨梨,〓陽慈梨,ニホンナシの愛宕の果実腐敗症状の原因究明を行い,本症状を引き起こす病原菌と,ナシ胴枯病菌,セイヨウナシ尻腐病菌との異同を検討した。ナシの果実腐敗は愛宕,幸水,鴨梨では心腐れ症状,バートレット,ラ・フランス,〓陽慈梨では尻腐れ症状を呈したが,この症状の違いは果実のていあ部の形態の差によるものと考えられた。腐敗果実から高率に分離された
Phomopsis属菌,ナシ胴枯病菌およびセイヨウナシ尻腐病菌をナシの枝,果実に接種すると,いずれの場合も発病が認められた。これらの
Phomopsis属菌には,気中菌糸が多く,光照射下で培地が赤紫色を呈する菌株と,気中菌糸が少なく,培地が灰∼緑褐色を呈する菌株に大別された。しかし,柄胞子の形態,大きさなどはいずれもほぼ同様であった。以上のことから,岡山県で発生したナシ果実の腐敗症状はナシ胴枯病の一症状であって
P. fukushiiに起因することが判明し,セイヨウナシ尻腐病も同じ病原菌によるものと考えられた。
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