日本植物病理学会報
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メダケ赤衣病菌ウイルスの理化学的ならびに血清学的性状
平塚 和之難波 成任山下 修一土居 養二
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1987 年 53 巻 5 号 p. 598-605

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抄録
さび病菌には広く球状ウイルスが存在するが,その性状を解明する目的でメダケ赤衣病菌ウイルス(Stereostratum corticioides virus, StcV)を純化し,理化学的および血清学的性状を調べた。S. corticioidesの冬胞子より磨砕抽出後,トリトンX-100処理,クロロホルムによる清澄化,PEG濃縮,分画遠心ならびにショ糖密度勾配遠心により径約40nmの球状ウイルスが純化された。本ウイルスはショ糖密度勾配遠心で単一バンド,塩化セシウム平衡密度勾配遠心で浮遊密度約1.29g/cm3の中空粒子のバンドおよび約1.39g/cm3の完全粒子のバンドを形成した。ウイルスの外被タンパク質は7.5% SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分子量約80,000および92,000の2種が分析された。ウイルス核酸は核酸分解酵素処理試験により2本鎖RNAと判定され,1%アガロースゲル電気泳動で分子量約3.5×106と計算された。純化ウイルスを家兎に注射し抗血清を作製した。本抗血清は採集年,採集地の異なるメダケ赤衣病菌のウイルスと免疫電顕法で明瞭な反応が認められ,同一ウイルスが広く分布することが判明した。一方,形状の類似するネギ赤さび病菌(Puccinia allii),オオムギ小さび病菌(P. hordei),ススキさび病菌(P. miscanthi),コムギ赤さび病菌(P. recondita)およびアスターさび病菌(Coleosporium asterum)の各ウイルスとは反応が認められず,StcVと上記5種のウイルスとは血清学的に異なるものと考えられた。
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