抄録
6∼8年生アカマツから切り取った1年生枝を各種濃度の安息香酸水溶液に4日間さして安息香酸(BA)を吸収させた。その後切り枝は水道水に移して,マツノザイセンチュウを接種した。接種後,切り枝の水分状態の変化および病徴の発現経過を追った。BAの0, 50, 100ppm各濃度溶液で処理した切り枝では,線虫接種により100%の枯死率であったが,300ppmでは枯死率0∼12%と発病抑制効果が明らかであった。BA 300ppm処理区切り枝のBA吸収量は,乾燥重1g当り3.1mgであった。濃度500ppmの処理では,安息香酸吸収による直接的影響で切り枝は枯死した。この場合のBA吸収量は,乾燥重1g当り4.4mgであった。線虫接種による枯死切り枝すべてにマツノザイセンチュウが多数検出された。BA 300ppm処理の健全切り枝では,線虫接種後実験期間中を通じマツノザイセンチュウが生息していたが,増殖活動は認められなかった。BA 300ppm処理区の切り枝では吸水量が多く,含水率の高いのが特徴的であった。また,木部圧ポテンシャルで示される切り枝の水分状態も最高であった。