日本植物病理学会報
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激害型マツ枯損病に対するマツの抵抗性機構としての動的抵抗性
奥 八郎白石 友紀近松 敬
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1989 年 55 巻 5 号 p. 603-608

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抄録

抵抗性を異にする樹種の2年生マツ苗にマツノザイセンチュウを接種すると,いずれの樹種においても接種線虫数はいったん減少するが,その後罹病性のクロマツでもっとも多く増殖し,次いでアカマツ,テーダマツの順であった。抵抗性のリキダマツでは増殖しない。主幹を2.5cmに切断し,上部に線虫を接種すると,24時間後には,罹病性のクロマツ,抵抗性のリキテーダマツともに,ほぼ同数の線虫が下部に通り抜けるが,5cmに切断した場合,クロマツの主幹を通り抜けるが,リキテーダマツの主幹は通り抜けない。このことは,病原線虫がリキテーダマツの主幹を移動している間に抵抗性が誘導され,接種部から2.5∼5cmの間で線虫の移行が停止したことを示している。リキテーダマツの主幹を55Cで5分間加熱すると線虫は通り抜けるようになる。また,線虫を接種したリキテーダマツには,非接種のものにくらべて多量の線虫不動化物質が含まれている。このように,ある樹種の本病に対する抵抗性は誘導的なものであると考えられる。

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