日本植物病理学会報
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安息香酸を吸収させてマツノザイセンチュウを接種したアカマツの木部仮道管壁孔の解剖学的観察
池田 武文真宮 靖治庄司 次男
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1989 年 55 巻 5 号 p. 664-666

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抄録

アカマツの1年生切り枝に各種濃度の安息香酸(BA)溶液を吸収させた後,マツノザイセンチュウを接種した。接種3∼4週間後の切り枝の木部を走査電子顕微鏡で観察した。100ppm以下の溶液で処理した切り枝はすべて枯死し,木部仮道管の壁孔は閉塞していた。一方,300ppm溶液で処理した切り枝はほとんどが枯死せず,壁孔は閉塞していなかった。500ppm溶液で処理した切り枝は,BA吸収による直接的影響で枯死したが,壁孔は閉塞していなかった。さらに300, 500ppm溶液処理では,壁孔のトールスに穴が開いていた。これらのことから,300ppm濃度以上の安息香酸溶液は,壁孔の閉塞を防いだり,トールスに穴を開けることで木部水分通導性を高め,切り枝の水分状態を高く保っていることが考えられた。このことは,300ppm溶液で処理した罹病していない切り枝で,生きたマツノザイセンチュウの個体数が増加しないことと関連することが推察された。

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