抄録
沖縄県西表島のカンキツ(品種:シークワシャ)樹にカンキツグリーニング病の発生を確認した。罹病樹は黄化,小葉化,あるいは微量要素欠乏症など生理障害樹にみられる症状を表し,圃場観察だけでは同定できなかったが,ポンカン実生苗による検定からその接木伝染性と典型的なグリーニング病の病徴発現を確認できた。超薄切片の電顕観察によって,病徴を表した検定植物の罹病葉師管部組織の細胞内に,不定形の,厚い膜構造を有する細菌様微生物の存在を認めた。検定植物上の病徴,病原体の形態,ならびにその病徴発現温度域から,中国,台湾および東南アジア地に発生しているアジア系グリーニング病に属するものと考えられる。