抄録
岩手,山梨,長野および島根県下のブドウ根頭がんしゅ病罹病樹から25菌株の病原細菌を分離し,病原性と90項目の細菌学的性質を調査して病原学的に検討した。本細菌はグラム陰性,好気性の周毛桿菌で白色集落を形成し,単針付傷接種で原寄主のブドウのほか,トマト,ヒマワリにもがんしゅを形成した。また,比較供試したAgrobacterium tumefaciens biovar 1とは15項目,biovar 2とは14項目の細菌学的性質で差異が認められたのに対し,Bergey's Manual (1984)に記載のbiovar 3とはエタノールとプロピオン酸の分解以外の性質で一致した。以上のことから,本細菌をAgrobacterium tumefaciens (Smith et Townsend 1907) Conn 1942 biovar 3と同定した。