日本植物病理学会報
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イネいもち病菌の宿主選択的感染機構に関する研究 (2)
発芽胞子による感染誘導因子の生成とその植物毒性
荒瀬 栄木下 誠子加納 幹生野津 幹雄田中 恵美子西村 正暘
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1990 年 56 巻 3 号 p. 322-330

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抄録

イネいもち病菌のイネ葉への感染を誘導する因子が,イネ品種関口朝日を検定植物として用いることにより病原性保有菌株の胞子発芽液中から検出され,部分純化された。イネに病原性を示さないAlternaria alternataの胞子をこの因子の存在下でイネ葉に噴霧接種すると,A. alternataによる多くの病斑が形成された。しかし,いもち病菌の非宿主植物に対しては病斑は形成しなかった。この因子はイネに対して強い植物毒性を発揮した。関口朝日葉に有傷滴下すると,関口病斑類似のえ死斑が形成されたが,新2号葉ではえ死斑の形成は認められなかった。さらに,関口朝日および新2号種子を本因子を含む水溶液中で発芽させると,両品種の幼根伸長が著しく阻害された。一方,培養ろ液中にはテヌアゾン酸,ピリキュロール,ピリキュラリオールなどの毒性物質の生成が報告されているが,発芽液中にはこれら物質は検出されなかった。これらの結果は,イネいもち病菌が胞子発芽時に感染誘導能をもった未知の毒素を生成していることを示唆した。

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