べと病罹病性ダイコン品種,白首宮重と抵抗性品種,平安時無の葉,葉柄,胚軸および根でのダイコンべと病菌(
Peronospora parasitica Pers. ex Fr.)の生育を比較検討した。葉の海綿状組織は構成細胞が小さくがつ細胞間隙が大きいので,細胞間菌糸は不規則に曲がりくねった形となり,通常1細胞中に一つの洋梨形吸器を形成した。根の柔組織は,大きな細胞が互いに密着したち密な構造であり,狭い細胞間隙に表面の滑かな円筒形の菌糸が生育し,1細胞中に1ないし数個の種々の形態の吸器を形成していた。葉柄と胚軸での感染は根の場合に類似していた。細胞間菌糸が柔組織中に未確認の構造物を形成することを見いだしたので,その形態ならびに形成過程を調査した。根の柔組織では,菌糸は接触する細胞内に直接侵入して吸器を形成した。しかし,菌糸が大きな宿主細胞に到達したとき,しばしば葉状の特異な構造物を形成し,細かく分枝してその細胞表面を取り囲んだ。この構造物は細胞間隙にくさびを打ち込むように侵入して広がる,厚さ約6μmの偏平構造であり,大きさは形成される宿主細胞の大きさに比例して大形となった。この構造物からは種々の形態の吸器が形成され,その数は1細胞当り10から25個のものもあった。この構造物は人工接種した罹病根切片にも形成された。この形成数は接種表面近くで多く,細胞間隙の菌糸密度が高いところほど,また,大きな細胞が存在するところほど多かった。これは接種した白首宮重と平安時無にともに形成されたが,後者では形成が1日遅れて始まり,1日早く停止したので,接種4日後ではこの形成数は前者の2/3であった。これは大きな宿主細胞に速やかに多数の吸器を形成するための構造物であろう。
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