日本植物病理学会報
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Rhizoctonia solani Kühn (AG-1, IA)の菌核形成に及ぼすリンおよびマグネシウムの影響
諸見里 善一石崎 文枝高良 このみ田盛 正雄
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1991 年 57 巻 5 号 p. 649-656

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抄録

基本培地のホプキンス培地からKH2PO4が欠如するとRhizoctonia solani (AG-1, IA)の菌糸は生育したが,菌核はまったく形成されなかった。しかし,MgSO4が欠如すると菌核数・量とも減少したが,菌核形成は認められた。培地中のKH2PO4を陽イオン部の異なる他のリン酸塩に置き換えた場合,形成数・量に差異は認められたが良好な形成が認められた。KH2PO4を用いたリン酸の最適濃度は菌核形成数・量および菌糸重量ともに100ppm付近であった。マグネシウムを添加すると,菌核数・量ともに濃度に比例して増加した。これらのことからリンイオンはR. solaniの菌核形成に必須不可欠であり,マグネシウムイオンは誘導促進効果を有することが考えられる。また,菌糸や原基形成の段階までリン酸があっても,それ以降供給がなければ菌核にはわずかしか分化しないのに対し,これらの段階まで供給がなくてもそれ以降の段階に供給されれば対照区と同数・同量の菌核が形成された。リン酸を含まない培地で生育した菌糸の分岐間隔はリン酸を含む培地で生育した菌糸に比べ長い傾向にあった。また,KH232PO4を培地に入れ,リン酸の培地から菌体への取り込みとその後の移行を見ると,菌核の形成・成熟期を通してほとんどのリン酸が菌核に移行することが判明した。

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