抄録
沖縄県の土壌中に埋めた菌核病菌(Sclerotinia sclerotiorum)の菌核から分離されたChaetomium trilaterale var. diporum RC-5が産生する抗糸状菌物質を精製し,その抗菌スペクトルを調査した。本菌を修正Richards培地で培養して得た培養ろ液から,クロロホルム抽出と薄層クロマトグラフィーにより分画・精製した本抗糸状菌物質は元素分析値およびFAB-MS法によりC31H35O8N(分子量549)と決定された。本物質はS. sclerotiorumとBotrytis cinereaの菌糸伸長を強く抑制し,菌糸先端には異常分岐が認められた。両菌に対するPDA培地上でのED50は約10ng/mlで,シクロヘキシミドの20倍以上の活性が認められた。一方,Pyricularia oyzae, Sclerotium hydrophilum とRhizoctonia solaniの数菌株に対しては100μg/mlでもまったく抑制が観察されなかった。