抄録
イネ縞葉枯ウイルスをCl-塩,NaCl, KCl, CsCl, NH4Clの1Mおよび2M濃度で処理すると,本ウイルス粒子に付随しているRNAポリメラーゼの活性が失活し,塩を除去しても,その活性は回復しなかった。一方,SO42-塩,(NH4)2SO4, Na2SO4, Cs2SO4は高濃度で処理してもポリメラーゼ活性に影響を及ぼさなかった。Cl-塩およびSO42-塩をRNAポリメラーゼ活性測定溶液に添加した場合,Cl-では50∼100mM以上の濃度で,SO42-塩では30mM以上で活性を阻害したが,SO42-塩による活性阻害が顕著であった。ウイルス標品中に塩の存在する条件下で電子染色し,電顕観察すると,外被蛋白質サブユニットが密につまったと想像される‘rigid’な粒子やスーパーコイル様の環状粒子も高頻度で観察された。本研究で,イネ縞葉枯ウイルスの外被蛋白質は典型的なα-ヘリックス構造をとっていることが明らかになったが,塩の添加による構造変化は認められなかった。イネ縞葉枯ウイルスのRNAポリメラーゼに対する塩の活性阻害作用について考察した。