日本植物病理学会報
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滅菌土壌中に培養したアブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子の活性に及ぼす環境要因の影響
高橋 賢司
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1994 年 60 巻 6 号 p. 658-666

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抄録

滅菌土壌中に培養したアブラナ科野菜根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)休眠胞子の活性に及ぼす温度,土壌水分および土壌pHの影響を調べた。酸性土壌中では不活性胞子の割合は,宿主植物根が不在でも培養直後から速やかかつ顕著に増加し,培養30日後に約70∼80%に達した。この培養直後の不活性胞子の割合の増加は,温度(15∼30°C)と土壌水分(含量35∼100%)にほとんど影響されなかったが,土壌pHには大きく影響され,pHが約4.5∼6.5の酸性土壌で増加が大きかった。しかし,アルカリ性土壌中でも不活性胞子割合の増加は完全に抑制されず,7ヵ月間の培養中に徐々に割合が増加した。これらの結果から,土壌pHは休眠胞子の活性に大きく影響する要因であるが,休眠胞子の生存を単独で決定できる要因ではないことが示唆された。

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