日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
60 巻, 6 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 植原 健人, 細川 大二郎
    1994 年 60 巻 6 号 p. 649-657
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルス(TMV)感染タバコプロトプラストにおけるウイルスRNAの分布をin situハイブリダイゼーション法を用いて検討した。核酸プローブとしては,TMVの外被蛋白質遺伝子のcDNAからT7 RNAポリメラーゼによるin vitro転写系を用いて調製したジゴキシゲニン標識リボプローブを用いた。ジゴキシゲニン標識リボプローブの可視化はアルカリホスファターゼ標識ジゴキシゲニン抗体を用いた酵素組織化学あるいはFITC標識ジゴキシゲニン抗体を用いた蛍光抗体法によった。アンチセンスRNAプローブを用いた場合,シグナルは接種2時間後に細胞質で弱く観察され始め,その後,徐々に強くなり,接種12時間後で最も強く観察されたが,その後は徐々に弱くなった。センスRNAプローブを用いた場合もシグナルは,接種2時間後に細胞質で弱く観察され始め,接種12時間後で最も強くなったが,その後は徐々に弱くなった。しかし,このセンスRNAプローブのシグナルはアンチセンスRNAプローブのそれに比べかなり弱かった。両プローブとも核内には接種後のいずれの時期においてもシグナルは観察されなかった。これらの結果はTMV-RNAの合成部位が細胞質であることを示していると考えられた。
  • 高橋 賢司
    1994 年 60 巻 6 号 p. 658-666
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    滅菌土壌中に培養したアブラナ科野菜根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)休眠胞子の活性に及ぼす温度,土壌水分および土壌pHの影響を調べた。酸性土壌中では不活性胞子の割合は,宿主植物根が不在でも培養直後から速やかかつ顕著に増加し,培養30日後に約70∼80%に達した。この培養直後の不活性胞子の割合の増加は,温度(15∼30°C)と土壌水分(含量35∼100%)にほとんど影響されなかったが,土壌pHには大きく影響され,pHが約4.5∼6.5の酸性土壌で増加が大きかった。しかし,アルカリ性土壌中でも不活性胞子割合の増加は完全に抑制されず,7ヵ月間の培養中に徐々に割合が増加した。これらの結果から,土壌pHは休眠胞子の活性に大きく影響する要因であるが,休眠胞子の生存を単独で決定できる要因ではないことが示唆された。
  • 高橋 賢司
    1994 年 60 巻 6 号 p. 667-674
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宿主植物根不在の自然土壌中とオートクレーブ滅菌土壌中それぞれにおいて培養したアブラナ科野菜根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)休眠胞子の活性を調べ,両土壌間で比較した。不活性な休眠胞子の割合は,両土壌中とも培養後の日数の経過に伴い増加したが,その増加の程度は滅菌土壌に比べて自然土壌で小さく,自然土壌では休眠胞子の不活性化が抑制されていた。休眠胞子不活性化の抑制は,4地点から採取した自然土壌すべてに認められたが,圃場から採取した土壌に比べて未耕地から採取した土壌で小さかった。この未耕地土壌は,圃場土壌に比べて土壌微生物数が少なく,全炭素と腐植の含量が多く,C/N比が高かった。自然土壌における休眠胞子不活性化の抑制は,自然土壌のガス滅菌によって消去された。この抑制はまた自然土壌に滅菌土壌を混合すると小さくなり,さらに自然土壌ヘグルコースを添加しても小さくなった。これらの結果から,自然土壌における休眠胞子不活性化の抑制には微生物活性に関連する生物要因が関与していると推察された。
  • 菅野 善明, 飯田 久, 吉川 信幸, 高橋 壯
    1994 年 60 巻 6 号 p. 675-680
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    モザイク症状を呈したホップ(Humulus lupulus L.品種:Sunshine)からホップモザイクウイルス(hop mosaic virus: HMV)を分離した。本ウイルスの宿主範囲を11科24種の植物について調査した結果,ホップ(品種:信州早生)およびNicotiana occidentalisに全身感染し,N. clevelandii, Chenopodium quinoaおよびカボチャでは接種葉のみに感染した。HMVの増殖宿主としてN. occidentalisが適しており,本植物の感染葉からHMVを精製した。精製ウイルス粒子は長さ625nm,幅13nmのひも状粒子で,分子量32,800ダルトンの1種類の外被タンパク質と分子量2.91×106ダルトンの1種類の核酸からなっていた。本ウイルスとこれまでにホップから分離された3種carlavirus (HMV,ホップ潜在ウイルス;HLV, American hop latent virus)との血清関連を免疫電顕法により調査した結果,本ウイルスは英国で分離されたHMVに対する抗血清と強く反応し,日本および英国で分離されたHLVに対する抗血清と弱く反応した。わが国のホップ栽培圃場におけるHMVの発生を調査したところ,栽培ホップにおける発生は認められなかったが,育種材料として用いられている数種導入品種からHMVが検出された。
  • 内藤 繁男, 兼松 誠司
    1994 年 60 巻 6 号 p. 681-690
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1992年7月下旬,東北農業試験場において,秋播きコムギ立毛時に間作したダイズに原因不明の葉腐れ症状がほ場全面(0.6ha)に発生した。症状は初め直径1mm,周囲が褐色の退緑斑点を生じ,のち多湿な気象下でその周囲に円形のち不定形,暗緑色∼褐色病斑を呈した。同様な症状が岩手,宮城,秋田県の農家畑の単作ダイズにも確認された。罹病組織からはR. solaniが高率に分離された。分離菌66菌株のうち64菌株は菌糸融合群AG-2-1と高い頻度(75%>)
    で菌糸融合したが,AG-2-2の培養型IIIBおよびIV,あるいはAG-BIとの融合頻度は低率(16%<)であった。PDA上での培養菌叢は,初め無色のち淡褐色を呈し,輪状に菌核を形成する傾向があった。一方,菌糸は5∼30°Cで生育し,その最適温度は23°Cであった。病原性は,ダイズ,アズキ,インゲンなどに対し強く,とくに出芽前立枯れを激しく起こし,またダイズ葉に葉腐れを生じた。ダイコン,ナタネに対する病原性は弱く,AG-2-1の菌株が強い病原性を示したのと対照的であった。またダイコン,コムギに対する病原性がAG-2-2のIIIBやIVとも異なる傾向が見られた。以上のように,ダイズ葉腐れ症状から分離した菌株の多くは,菌糸融合頻度からAG-2内に含まれるが,そのサブグループはチアミン非要求性のAG-2-1および要求性のAG-2-2のIIIB・IVのいずれにも相当しない。この新しいグループをAG-2内のサブグループ3 (AG2-3)と呼ぶことを提案する。
  • 中村 茂雄, 吉川 正信, 平 秀晴, 江原 淑夫
    1994 年 60 巻 6 号 p. 691-693
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    複数のRNAウイルスに対する抵抗性付与を目的として,ヒト2′-5′オリゴアデニル酸(2-5A)合成酵素遺伝子を導入した形質転換タバコを作出した。得られた形質転換体において2-5A合成酵素遺伝子のゲノムへの組み込みと,自殖次世代(R1)におけるRNAレベルでの発現が確認された。このR1世代にキュウリモザイクウイルス(CMV)およびタバコモザイクウイルス(TMV)を接種し,非形質転換体の場合と比較した。CMV接種では,接種葉ウイルス増殖量の減少と上位葉におけるモザイク症状出現の遅延が観察された。またTMV接種においても局部壊死斑形成数の減少が認められた。このことから,2-5A合成酵素遺伝子導入植物において,複数のRNAウイルスに対する抵抗性機構が構築されることが示唆された。
  • 白井 佳代, 堀田 治邦, 田中 文夫, 谷井 昭夫, 美濃 羊輔
    1994 年 60 巻 6 号 p. 694-697
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1990年に北海道十勝地方で,ダイズ斑点病が,品種スズヒメに特異的に多発生した。そこで,この罹病スズヒメ種子より5菌株を分離し,レース判別試験を行った。試験は,Phillips & Boerma (1981)の方法に準じた。その結果,5菌株はすべて同一レースであり,これは,米国で報告されている既知の5レースとは異なる新レースであると考えられた。したがって,本レースをレースHと命名した。また,北海道の実用品種において,同様に接種試験を行ったところ,葉の病斑数には品種間差がみられた。スズヒメは本病に対する感受性が最も高い品種のひとつであった。また,ユウヒメ,茶小粒,カリユタカなどは,まったく発病せず,抵抗性品種と考えられた。
  • 竹原 利明, 國安 克人
    1994 年 60 巻 6 号 p. 699-704
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Fusarium oxysporumの各種分化型11菌株から塩素酸塩を含む培地上で硝酸塩利用能欠損変異菌株(nit変異菌株)の作出を試みた。その結果,供試した全ての菌株からnit変異菌株が作出された。得られたnit変異菌株は硝酸塩,亜硝酸塩,ヒポキサンチン,アンモニウム塩,および尿酸の5種の窒素源利用能によりnit1, nit3, NitMの表現型に分類された。nit変異菌株の出現頻度や各表現型の出現比率は菌株により異なった。最少培地上でのnit変異菌株の対峙培養により9菌株の菌糸和合性を調べた結果,異なる分化型間では菌糸融合を示す補完反応が認められず,互いに異なる和合性群に属すことが明らかとなった。F. oxysporumの土壌中での動態解析にnit変異菌株を使用できる可能性を示唆した。
  • 竹原 利明, 國安 克人
    1994 年 60 巻 6 号 p. 705-710
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Fusarium oxysporumnit変異菌株の選択分離培地を用い,nit変異菌株を土壌中や罹病植物体から選択的に分離する方法と,その適用性を検討した。塩素酸カリウムを含む選択分離培地(MMCPA培地)上では,フザリウム菌の野生菌株はほとんど生育せず,胞子懸濁液,汚染土壌および罹病植物体からnit変異菌株が選択的に分離された。
    窒素源として硝酸塩のみを含む分離培地(MMPA培地)上ではnit変異菌株はごく小さなあるいは薄い菌叢を作るため,野生菌株との識別が可能であった。
    MMCPA培地とMMPA培地を併用することで,マーカーとしたnit変異菌株と自然に存在する野生菌株を別々に分離することにより,F. oxysporumの動態を解析することが可能と思われた。
  • 吉田 政博, 西山 隆行, 山口 武夫, 小林 研三
    1994 年 60 巻 6 号 p. 711-716
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    メロンがんしゅ病病原放線菌胞子の発芽状況を調べ,未発芽胞子の存在とそれらに対する発芽活性化処理の効果を検討し,休眠状態の胞子の存在を確認した。28°C,14日間培養による形成胞子(新生胞子)と28°C,28日間培養後5°C,28日間保存した胞子(冷蔵胞子)のいずれでも,胞子発芽は28°Cで培養後3時間目から確認された。新生胞子では最終的に発芽するほとんどの胞子が24時間目までに発芽したが,冷蔵胞子の発芽は比較的非同調的で発芽率の増加は緩やかに進み,最終的な発芽率に達するまでに新生胞子より1∼2日程度の遅延が認められた。胞子の発芽率は2種の培地上において,新生胞子で84.0∼87.0%,冷蔵胞子で81.2∼83.3%を示し,約10∼20%の未発芽胞子が存在した。これらの未発芽胞子の発芽を活性化するために加熱処理をした結果,40°C,20分間処理においてコロニー形成率は無処理区の110.0∼115.1%まで増加させることができた。さらに,6種の胞子活性化剤の処理(40°C,20分)効果を試験した結果,0.00625∼0.05%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および1∼2%の酵母エキス(YE)において熱処理のみの対照区より発芽の活性化が認められ,とくに0.025%のSDSではコロニー形成率を121.2%まで高めた。一方,0.025% SDSと各種濃度のYEを組み合せて40°C,20分間の処理を行ったが,すべての組み合せ処理区において発芽の活性化は認められず,むしろ発芽に阻害的に作用した。以上のことから,本病原放線菌胞子には培地上で容易に発芽しない休眠状態にある胞子が存在し,その休眠打破には0.025% SDSによる40°C,20分間処理が最適で,この処理によって休眠状態のほぼすべての胞子の発芽を活性化できることが示唆された。
  • 中沢 憲夫, 中沢 憲夫, 福島 千萬男, 原田 幸雄
    1994 年 60 巻 6 号 p. 717-724
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    青森県で1989年および1990年産の貯蔵リンゴに多発した腐敗果実および,1991年に青森県下の1園地で発生したニホンナシとセイヨウナシの腐敗果実から同一種のPhytophthora属菌が高頻度で分離された。本菌は遊走子による無傷接種でそれぞれの果実に強い病原性を示し,発病部位から接種菌と同一のPhytophthora属菌が再分離された。本菌は培養性質,各器官の形態と大きさから,Phytophthora syringae (Kleb.) Kleb.と同定された。これは日本におけるP. syringaeの最初の発生記録であり,本菌は日本におけるリンゴ,ニホンナシ,およびセイヨウナシ疫病の新しい病原菌である。
  • 茫 永堅, 難波 成任, 山下 修一, 土居 養二
    1994 年 60 巻 6 号 p. 725-728
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Barley yellow dwarf virus (BYDV) distributed widely in barley, wheat, rye, oat, maize, teosinte and foxtail millet showing a yellowing, redding or dwarfing in Kanto area. Wheat, rye, maize, teosinte and foxtail millet were newly recorded natural host plants of BYDV in Japan. New diseases named yellow dwarf or yellows for them. Two BYDV isolates from maize and oat were characterized by the aphid transmission, host range, physicochemical properties, serology and intracellular appearance. These two isolates were regularly transmitted by Rhopalosiphum padi and R. maidis, respectively, indicating that the isolates may be differ from other known isolates of BYDV.
  • 三好 孝典, 橘 泰宣
    1994 年 60 巻 6 号 p. 729-734
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A selective medium for isolation of Pseudomonas syringae (SPS), the causal agent of bacterial blossom blight of Kiwifruit was developed. The composition of the medium was as follows: NH4H2PO4 1.0g, KCl 0.2g, MgSO4⋅7H2O 0.2g, adonitol 2.0g, phenol red 20mg, methyl violet 1mg, pheneticillin potassium 50mg, cetrimide 10mg, agar 15g, pH 6.8 per 1.000ml of distilled water. Thirty two P. syringae strains pathogenic to Kiwifruit were grown on the medium and 31 strains showed convex colonies with entire margin. Color of the colonies was purple at the center and opalescent white at margin. One strain formed small opalescent white colonies. Colony forming efficiency of the medium was less than those of King's medium B. Twenty one isolates of Pseudomonas from Kiwifruit except P. syringae and 21 strains of phytopathogenic bacteria belonging to 5 genera were grown on the medium and they didn't grow with few exceptions which showed distinctive colonies from that of P. syringae. SPS was used for isolation of P. syringae from field-grown Kiwifruit. One hundred candidates were isolated and tentative characterization showed that all of them were identical with the P. syringae. Those results indicated that the possible application of the medium was useful for ecological studies of the bacterium in fields.
  • 九州部会講演要旨
    1994 年 60 巻 6 号 p. 735-741
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 60 巻 6 号 p. 742-755
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 60 巻 6 号 p. 756-764
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 60 巻 6 号 p. 765-789
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1994 年 60 巻 6 号 p. 790-796
    発行日: 1994/12/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top