日本植物病理学会報
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宿主植物根不在の土壌中におけるアブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子の活性に影響を及ぼす生物要因
高橋 賢司
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1994 年 60 巻 6 号 p. 667-674

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抄録
宿主植物根不在の自然土壌中とオートクレーブ滅菌土壌中それぞれにおいて培養したアブラナ科野菜根こぶ病菌(Plasmodiophora brassicae)休眠胞子の活性を調べ,両土壌間で比較した。不活性な休眠胞子の割合は,両土壌中とも培養後の日数の経過に伴い増加したが,その増加の程度は滅菌土壌に比べて自然土壌で小さく,自然土壌では休眠胞子の不活性化が抑制されていた。休眠胞子不活性化の抑制は,4地点から採取した自然土壌すべてに認められたが,圃場から採取した土壌に比べて未耕地から採取した土壌で小さかった。この未耕地土壌は,圃場土壌に比べて土壌微生物数が少なく,全炭素と腐植の含量が多く,C/N比が高かった。自然土壌における休眠胞子不活性化の抑制は,自然土壌のガス滅菌によって消去された。この抑制はまた自然土壌に滅菌土壌を混合すると小さくなり,さらに自然土壌ヘグルコースを添加しても小さくなった。これらの結果から,自然土壌における休眠胞子不活性化の抑制には微生物活性に関連する生物要因が関与していると推察された。
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