抄録
Fusarium oxysporumに属する6種の分化型(f. sp. lycopersici, radicis-lycopersici, melonis, cucumerinum, fragariae, spinaciae)を用いて,プロトプラストを調製することなく,直接菌体から染色体DNAを遊離させ,パルスフィールド電気泳動によって分画する方法について検討した。ジャガイモ・ブドウ糖液培地で培養して得た小型分生胞子および発芽胞子を低温固形化アガロースに包埋し,endo-β-1, 3-glucanase, chitinase, chitosanase, Novozym 234で処理したのち,SDS存在下でprotease消化したものを泳動用試料とした。これら試料につき,染色体DNAの大きさに応じた4条件下でクロスフィールド電気泳動を行い,ethidium bromide染色によってDNAを検出した。その結果,endo-β-1, 3-glucanase処理が菌体からのDNAの放出に最も適していることが明らかとなった。また,供試11菌株から検出された染色体サイズDNA数は9∼15本,染色体DNAの大きさは0.8∼7.4Mb,ゲノムの大きさは36.0∼56.3Mbであると推定された。本法は他の糸状菌の染色体DNAの分離・分画にも適していると考えた。