日本植物病理学会報
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石垣島の耕地防風林に発生したシマサルノコシカケによる樹木の南根腐病
被害実態,病原菌および接種試験
阿部 恭久小林 享夫大貫 正俊服部 力鶴町 昌市
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1995 年 61 巻 5 号 p. 425-433

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抄録
沖縄県石垣島の熱帯農業センター沖縄支所(現:国際農林水産業研究センター沖縄支所)の耕地防風林にイヌマキ,モクマオウ,テリハボク等の樹木の萎凋・枯損被害が発生した。1988年11∼12月に現地調査を行った結果,枯損・萎凋は43地点で発生し,枯損・萎凋木の総計は211本,被害部分の延べ長は515mで,防風林の総延長の11.2%を占めていた。被害木の根株を掘り起こし菌株の分離培養を行うと,ほとんどの被害木から同一の培養的性質を有する菌株が分離された。本菌をイヌマキ苗木の根に接種すると19本中9本が13ヵ月以内に枯死し,枯死した苗木からは本菌が再分離された。培養的性質から本菌が菌蕈類に属することが推定されたので,防風林内外の枯損木・伐根上に発生していた菌蕈類の子実体から菌株を分離培養した。それらの子実体の一つから分離された菌株の性質が,被害木から分離された菌株の性質と一致し,その子実体はPhellinus noxiusと同定された。一方,安田が1916年に小笠原からFomes lamaensis(シマサルノコシカケ)として報告した菌は,Ph. noxiusであることが判明した。沢田は1934年にPh. noxiusを「キコロシサルノコシカケ」として台湾から報告しているが,安田の命名が早いので病原菌の和名は「シマサルノコシカケ」を採用し,病名として「南根腐病」を提案した。また,Ph. noxiusよりも先名権があるとされていた種Ph. sublamaensisの基準標本を検討した結果,その標本はPh. lamaensisであることが判明したため,病原菌の学名としてはPhellinus noxiusを採用する。
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