植物形質転換用ベクターが導入された
Agrobacterium属細菌を選抜するのに,どのような抗生物質が利用できるかを調べるため,培養液をPDA培地上で段階的に希釈し,細菌の抗生物質耐性を評価する方法を考案した。本法を用いて,主として日本で分離された
Agrobacterium属細菌の46菌株について,ampicillin, carbenicillin, chloramphenicol, kanamycin, rifampicin, streptomycin, tetracycline, vancomycinの8つの抗生物質に対する耐性を調べた。その結果,全ての菌株がtetracyclineに対して感受性を示した。また,ほとんど全ての菌株は,ampicillinならびにkanamycinに対して強い耐性を示し,rifampicinに対しては感受性もしくは弱い耐性を示した。biovar 1に属する大部分の菌株は,vancomycinに対して強い耐性を示したが,biovar 2に属するほとんどの菌株はcarbenicillinに対して強い耐性を示す反面,vancomycinに対しては感受性もしくは弱い耐性を示した。一方,同一biovarに属す各々の菌株は,chloramphenicolおよびstreptomycinには,多様な耐性程度を示すことが分かった。以上より,本研究で調べた
Agrobacterium属細菌では,tetracyclineが植物形質転換用ベクターの最良の選択マーカーであることが分かった。また,抗生物質耐性についての検定結果は,
Agrobacterium属細菌の補助的な分類手段として利用できる可能性が示唆された。
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