1996 年 62 巻 1 号 p. 53-56
本邦産イネ白葉枯病菌の遺伝的多様性解析を目的として,さらに遺伝子解析によるレース判別の可能性を探るため,イネ白葉枯病菌各レースの代表菌株についてRFLP解析を行った。イネ白葉枯病菌由来の高頻度反復配列を含むpJEL101をプローブとして,各代表菌株の全DNAを各種制限酵素で切断した断片についてサザンブロット解析を行った結果,いずれの制限酵素を用いても各代表菌株は固有のRFLPパターンを示し,相互の重複は認められなかった。また,同じレースに属する日本産とインドネシア産菌株は互いに相同な場合と異なる場合とがみられた。さらに,一部の品種に対する病原性の差異からレースIBおよびIIIBに分類された菌株について検討した結果,それらは各々レースIAおよびIIIAとは異なるRFLPパターンを示した。しかしながら,同一レースに属する複数の菌株を供試して同様な解析を行った場合,RFLPパターンによりさらに細分類が可能であり,またレースIおよびIIの一部の菌株間でパターンの重複が認められた。以上の結果から,pJEL101をプローブとしてRFLPパターンによる遺伝的多様性の解析,さらに各レース代表菌株の識別が可能であることが明らかとなった。しかしながら,本法をレース判別に適用するためにはプローブの改良あるいは新プローブの開発が必要であると考えられた。