日本植物病理学会報
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宿主特異的毒素を生産するAlternaria属菌におけるミトコンドリアDNA変異
草場 基章柘植 尚志
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1997 年 63 巻 6 号 p. 463-469

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抄録
Alternaria磁属菌には宿主特異的毒素を生産する7種の植物病原菌が存在する。これら病原菌の遺伝的類縁関係をミトコンドリアDNA(mtDNA)の制限酵素断片長多型(RFLP)分析に基づき調査した。供試菌として, 7種の宿主特異的毒素生産菌16菌株を含むAlternaria加属菌13種計27菌株を用いた。各菌株の全DNAを制限酵素BglII, HindIIIおよびXbaIでそれぞれ切断し, A. kikuchiana 15A菌株から単離したmtDNAをプローブとしてハイブリダイゼーションを行った。3種類の制限酵素で検出された多型を組み合わせて解析したところ,供試菌株群から18種類のmtDNA多型(M1~M18と命名)が検出された。宿主特異的毒素生産菌とA. alternataの基準株からは11種類の多型(M1~M11)が検出されたが,それらのうちM1, M3, M7およびM8型は異なる毒素生産菌とA. alternata基準株に共通して分布していた。一方,A. alternataと形態的に異なる他種菌からは,それぞれの種で異なる7種類の多型(M12~M18)が検出された。mtDNA型のRFLPパターンに基づき平均距離法により系統樹を作成したところ,宿主特異的毒素生産菌とA. alternataの基準株から検出された11種類のmtDNA型は,他種菌のmtDNA型とは明確に分岐した単一のクラスターを形成した。以上の結果は,宿主特異的毒素生産菌を同一種A. alternataの病原性に関する変異系統であるとする病原型(pathotype)説の正当性を強く示唆した。
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