抄録
この論文において, 他者との相互交渉によって笑いが誘発されるプロセスの解明を試みる.仮設を検証するため2つの実験を行い, 被験者は全て大学生とし, 男女比はほぼ等しいものとした.笑いの出現率と呼吸数と感情変化に関する測定値を変数として用いた.実験1からヴントの感情の理論における緊張-弛緩の次元が笑いのメカニズムと関わる可能性が示唆された.実験2では, おかしみの評定と呼吸の急激な変化の出現がやや相関することが見出された.両実験において, 社会的相互交渉と笑いとが多少関係していることが示唆された.この知見の意義と今後の研究課題について検討を行う.