抄録
喘息の器官選択の問題は, 古くて新しい命題である.歴史的には精神分析の立場からの仮説と条件づけ理論に基づく仮説があり, これらの背景について簡単に述べた.喘息の器官選択は, アトピー性素因や気道過敏性素因などの遺伝的要因, アレルゲンや大気汚染, ウイルス, 細菌などの物理的景境要因, ストレスや性格対処行動などの心理社会的因子, 年齢による身体器官の発達と関係したアレルギーマーチなどを含めた個人的要因, の3つの要因が相互に関与し合って決定されると考えられる.それぞれの要因について, 現在の医学的知見や著者らの調査成績について述べた.さらに器官選択に関係した反応の機序について, ストレスによる気道反応性やlgE抗体産生の亢進, 免疫能の低下, 条件づけによるアナフィラキシー反応などに関する最近の研究成果をもとに考察を加えた.