心身医学
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放射能臨界事故による学校児童生徒の心的外傷後症状に関する研究
秋坂 真史渡辺 めぐみ志井田 孝石津 宏
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2005 年 45 巻 8 号 p. 607-617

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抄録

茨城県東海村で発生したJCO社による放射能臨界事故は, 一般社会のみならず心身の健康に敏感な住民にも大きな衝撃をもたらした.事故災害やその健康被害などについての報告も多い中, 本事故についての現場からの調査報告, とりわけ児童の心身への影響に関する学術報告は皆無に近かつた.そこで, 本邦で初めて住民を巻き込んだ放射能洩れ事故が, 近隣の学校生徒の心身に与えた影響, 特に心的外傷後症状の実態や内容などを調べる目的で調査を行った.屋内退避対象地域になったJCOから半径10km圏内の7市町村に所在する15校の小学生・中学生・高校生計479名を分析対象に, 事故直後(想起)および事故1年後に心的外傷後症状の感情状態や変化(現在)に関し, 無記名かつ自記式の質問紙調査を実施した.男女別また校種別でも, 両期とも精神的症状項目で女子が有意に高かつた.事故直後の身体症状や睡眠障害・興奮などの心身症状は性差なく, 比較的少数であつたが存在はした.このように事故1年後でも思春期女子の感情不安定性が目立ち, 健康診断や精神的フォローアップの必要性が示唆された.

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© 2005 一般社団法人 日本心身医学会
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