抄録
ヒトはさまざまな環境変化に順応して生活しているが,それらの変化が過度になると心身症の引き金となる.本稿では,急激な気温変動が繰り返される環境下で数日間飼育して作製される慢性ストレスモデルのSART(Specific Alternation of Rhythm in Temperature)ストレス動物の病態と治療薬を紹介した.SARTストレス動物の主な症状と病態は,情動行動の異常(過緊張,不安,うつ),心電図異常,脳波異常,腸蠕動運動亢進,自律神経失調症様症状,持続的低血圧,起立性低血圧,慢性痛覚過敏,化学伝達物質の脳内,腸管壁や血中の濃度変化などである.その発現機序は,副交感神経系の亢進によるものがほとんどであり,下垂体-副腎皮質系や交感神経系の関与は小さい.これらの症状および病態がヒトの過敏性腸症候群,線維筋痛症,その他さまざまな心身症疾患と類似していることから,SARTストレス動物は慢性ストレスの基礎研究と臨床研究のかけ橋となる良いモデル動物の一つと考えられる.