心身医学
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PTSDの予防と緩和における魚油の可能性(シンポジウム:精神栄養・行動医学 : 抑うつや不安の予防・治療における新しい可能性,2013年,第54回日本心身医学会総会ならびに学術講演会(横浜))
野口 普子西 大輔松岡 豊
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2014 年 54 巻 9 号 p. 856-860

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抄録

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は,恐怖記憶の過剰な固定化と馴化・消去学習が進まない病態として考えられる精神疾患である.動物実験から得られた海馬における恐怖記憶のメカニズムに関する知見から,海馬の神経新生を適切に制御することができれば,恐怖記憶が保存される脳領域をコントロールできる可能性が報告された(Kitamuraら,2009).また,ラットにω3系脂肪酸を投与すると,海馬における神経新生を促進することが報告されている.そこでMatsuokaは「ω3系脂肪酸によって海馬の神経新生を活性化させると,海馬から早期に恐怖記憶が消失し,結果的にPTSD症状が最小化する」という仮説を提案した.われわれの,我が国におけるω3系脂肪酸サプリメントを補充する2つの臨床試験は,PTSDの発症予防に対する栄養や食による介入の可能性を示唆するものである.

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© 2014 一般社団法人 日本心身医学会
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