抄録
時代は大きく変貌を遂げつつあり, 従来の心身医学の理念や概念, モデルでは対応できない諸問題も浮き彫りにされてきている. 心身症の病態研究に留まらず, IT化・合理化に伴う人間関係の希薄化, 共感性・協調性・情緒応答性の欠如, うつ病に代表されるメンタルヘルスの悪化など, 最近多発する社会問題や事象の背景に隠された病理を心身医学的に取り組む姿勢が求められる. また先端的研究の方向性として, 最新のテクノロジーを駆使したDNA配列・タンパク質・代謝物質の網羅的解析を可能にするゲノム・プロテオーム・メタボロームの手法, 後天的要因や環境による遺伝子発現の違いを解析するエピジェネティクス研究, 腸内・口腔内細菌叢による免疫調節, 脳画像による神経活動の解明, 諸ストレス関連疾患のバイオマーカーの探索など, 心身医学が取り組むべき基礎的研究は限りない. 時代的背景を踏まえたグローバルな視野からのストレス研究と対策が望まれる.