2017 年 57 巻 9 号 p. 896-901
自尊感情は神経性過食症の一次予防から三次予防までに関わる心理的要因として, 古くから注目を集めてきた. 近年でも自尊感情のもつ発症因子としての側面・調整変数としての側面・維持因子としての側面のそれぞれにおいて, 新たなモデルや介入方略の提案がなされている. そこで本研究ではこれらについての総括を行い, 神経性過食症研究および治療上の展望を論じた. その結果, 近年のモデルや介入方略は自尊感情の向上を通して, 体型への懸念が過食などの症状に対してもつ影響力を直接的あるいは間接的に減じることを治療のねらいとしており, 神経性過食症の中核症状についての効果を有することが示唆された. またさまざまな心理療法を統合する意義をもちうることからも, 自尊感情の概念的理解を深め, 介入方略の理論体系をより明確なものにしたうえで, 自尊感情を向上させるアプローチを開発することが神経性過食症の治療上有意義であると考えられた.