心身医学
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企画シンポジウム特集/女性心身医学診療の実際と将来
更年期障害の治療における心身医学的視点の重要性
相良 洋子
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2018 年 58 巻 8 号 p. 688-695

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抄録

更年期障害は, 閉経前後にみられる不定愁訴で, 卵巣機能の低下を主たる要因とするが, これに加齢に伴う心身の変化や社会文化的環境因子などが複合的に影響することで発現するとされている. 卵巣機能の低下に起因する症状にはホルモン補充療法 (HRT) が有効であるが, HRTが有効でない症例には, 「人生の過渡期」 という視点が役に立つ場合がある. 更年期は, 身体的変化だけでなく, 複数の喪失体験, 老いや死の実感などを経験しながら, 老年期に向けてそれまでとは違ったあり様を模索しはじめる時期であり, この時期の女性が経験する心理的葛藤は, 心理学上の中年期危機に相当する. 患者の中には, この過渡期の変化を受容できないことが原因と考えられる場合があり, このような症例では, 薬物療法で症状の緩和を図りつつ, 患者がこれらの変化を受容し, 次のライフステージに適応していくことを促すような, 心身医学的視点をもったアプローチが有用である.

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© 2018 一般社団法人 日本心身医学会
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