2019 年 59 巻 2 号 p. 155-163
抑うつ状態における双極スペクトラムの評価は難しく, 評価ツールの開発が望まれている. 本研究はうつ病患者における双極スペクトラムの有無による表情認知の特徴について明らかにすることを目的とした. うつ病と診断された患者23名を質問紙および構造化面接によってうつ病群と双極スペクトラム群に分け, 表情認知課題を施行した. 分析の結果, 同程度の抑うつ状態であっても双極スペクトラムを有する患者のほうが, 「幸せ」 表情を正確に認知できないこと, また双極スペクトラムの症状が多彩なほど, 「幸せ」 表情を認知するのが困難である可能性が示された. これらは, 表情認知の情報処理過程が関係している可能性と疾患の特徴を表している可能性が考えられた. 加えて, 表情認知課題は病型の評価ツールとしての可能性が示唆された.