老年期の幻覚, 妄想は認知症または認知症状と同様に重要な症状である. なぜなら認知症状と幻覚・妄想の両者の関係を正確にとらえて幻覚・妄想の鑑別を行うことでより適切な治療方針を立てられる場面が多々あるからである. 鑑別にあたり脳疾患も含めた身体疾患との関連の有無, 内服中の薬剤の影響の有無, 心理的環境的ストレスの影響の有無について検討することは重要であるが, 複数の要因が混合していることが多いため, どの要因がどの程度影響を与えているか考えていくことは重要である. 治療にあたり抗精神病薬を使用するときは, 過剰な鎮静や錐体外路症状の出現に注意し, なるべく少量から開始することが望ましい.