老年期の抑うつ状態の鑑別, 老年期うつ病の特徴, 老年期うつ病の環境的要因と心理的要因, 老年期うつ病の治療を解説した. 老年期の抑うつ状態ではせん妄, 認知症, うつ病の鑑別が重要である. 老年期うつ病の特徴として身体的愁訴が多い, 不安焦燥が前面に立つことなどを挙げた. 老年期うつ病の発症要因では自身の退職や子どもの独立といった環境的要因と, 配偶者との死別, 老化に伴う精神的・肉体的な衰えなどの心理的要因があることを指摘した. 老年期うつ病の治療では森田療法の考え方に基づいた養生の視点を解説し回復の程度によりアドバイスが異なることを述べた. 老年期うつ病と診断しても経過の中で認知症へ変化したり, ときにせん妄を呈したりするので, 老年期の抑うつ状態の鑑別を念頭に置くことが重要である.