2021 年 61 巻 1 号 p. 12-18
もともと入院治療から始まり, 神経質性格という性格傾向を基盤に 「とらわれの機制」 によって発展した神経症を主な適応としてきた森田療法であるが, 今日ではその治療適応を広げている. 外来が主な治療の場となっていて, そこではこれまでの入院治療での経験から蓄積されたコンセプトが応用されている. 本稿では主に心身症, 不定愁訴への外来森田療法について事例を挙げながら解説した. 心身症, 不定愁訴の患者は, とにかく症状を何とかしてほしい, という動機で受診するが, 森田療法は症状にターゲットを絞って受診する患者に対して, 症状の内容そのものよりも症状への態度を取り上げ, 症状があっても患者が本来もっている能力を発揮し彼の願望や目標を達成できるよう助けることを目指している. 症状だけに目を向けて視野が狭くなっている状態こそが病的であるとの立場から, 患者がより広い視野を回復できるように援助していく. しかし 「今すぐ症状を取ってほしい」 と医療機関を受診する患者にとってこのようなアプローチはいきなり言われても納得しがたいため, 外来治療に導入するまでには工夫を要する.