2021 年 61 巻 1 号 p. 19-23
直腸肛門の機能性障害は心療内科分野でもあまり検討されていない領域である. 主な症状としては括約不全, 肛門痛, 排便困難であるが, これらの症状は高い確率で合併する. 当院ではこれらの疾患に対して直腸肛門機能検査を行い, 病態を把握したうえで肛門機能検査を治療に応用している. 具体的には肛門内圧をモニターに表示し, 患者に見せながら括約筋の収縮弛緩訓練を行う肛門内圧バイオフィードバック (BF) 療法, シリコンバルーンを排出する排出訓練, 直腸内に留置したバルーンを用いて直腸最大耐用量の増加を図る直腸感覚訓練である. 特に機能性直腸肛門痛においてはこれら単独では不十分で心身医学的治療を含む集学的治療を要する. その治療成績の概要を示し, 症例を提示しその実際を述べる. また自己臭症にBF治療を試みた. 肛門痛, 自己臭に対する直腸肛門機能検査・治療および心身医学的治療の併用が有用であった.