2021 年 61 巻 1 号 p. 46-51
飢餓状態にある摂食障害患者の生命を救うためには, 入院による厳格な身体管理が不可欠だが, 患者の病識欠如や治療抵抗により入院導入に苦労することも多い. 精神科医療機関では医療保護入院といった法律に基づく非自発的な治療介入も可能だが, その適応基準は明確でなく, 患者の重症度や患者と家族の考え方, 家庭背景や経済状況などさまざまな条件を満たす必要がある. また, 入院後も治療環境上の制限や隔離や身体的拘束などの治療措置には, 医療倫理的配慮だけでなく治療全体への影響についても慎重に検討しなければならない. さらに, 精神科にとって不慣れな身体管理が重荷になることも多く, 内科などと連携して治療が行える総合病院精神科であっても, 摂食障害に併発する独特な身体的問題への対処は容易でなく, 疾患全体の理解と経験が必要となる. 本稿では総合病院精神科である当院での治療経験を踏まえ, 精神と身体への適切な治療介入について検討する.