2021 年 61 巻 6 号 p. 522-527
心身症の根源にある身心の状態への気づきが困難な心身症患者に対して,物理的実体を伴って気づきやすい呼吸や身体の感覚に注意を向けて行う身体へのアプローチが有効である.身心一如の原理に基づいたさまざまなマインドフルネスの実践法は,意図的に注意を向けて今この瞬間に生起している身体感覚への感受性を高める.とらわれのない心で観察する心の平静さが育まれると,身体感覚と心の状態との関係性を把握することが可能になる.日常生活のさまざまな場面での身心の状態や生活習慣をありのままに気づくことで,患者が主体的に適切な対応を探索し,心身症の予防や症状軽減につながる可能性がある.
マインドフルネスは,幅広い疾患領域に適応されており,脳科学研究の観点からもその効果機序の解明が進んでいる.マインドフルネスの身体からのアプローチは,心身症患者に体験を通して身心の状態に受容的に向き合いセルフケアする方法を提供する.