1998 年 11 巻 1 号 p. 75-77
糖尿病モデル動物であるOLETFラットの培養メサンギウム細胞を用いて細胞増殖能と細胞外基質産生能を検討した。培養OLETFラット・メサンギウム細胞の [3H]-thymidine取り込み能は対照である培養LETOラット・メサンギウム細胞に比較して有意に低下した。また,アンジオテンシンII刺激下では,培養OLETFラット・メサンギウム細胞のmitogenic activityは有意に増加した。一方,OLETFラット・メサンギウム細胞のI型,III型,IV型コラーゲンmRNAの発現量は,LETOラット・メサンギウム細胞に比して増加した。また,アンジオテンシンII刺激下では,OLETFラット,LETOラット・メサンギウム細胞ともにこれらのコラーゲンmRNAの発現量は増加したが,OLETFラット・メサンギウム細胞でより顕著であった。このように,OLETFラット・メサンギウム細胞でみられた細胞増殖能の低下と細胞外基質産生能の亢進は,メサンギウム基質増生が細胞増殖より顕著である糖尿病性腎症の組織像に一致する所見と考えられた。