日本小児腎臓病学会雑誌
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総説
増殖因子によるラットメサンギウム細胞 (MC) のα1β1インテグリン (IG) 依存性コラーゲン (COL) 基質リモデリングヘの影響
香美 祥二近藤 秀治黒田 泰弘
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キーワード: α1β1インテグリン
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1999 年 12 巻 1 号 p. 15-19

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抄録
 進行する腎炎における異常な細胞外基質 (ECM) のリモデリング (再構築) の分子生物学的機序を明らかにするために,ECMリモデリングのin vitroモデルとして用いられるCOL gel contraction assayを応用し,ラットメサンギウム細胞 (MC) が発現するα1β1インテグリン (IG) の分子機能と増殖因子による発現・機能への影響を検討した。Trans-forming growth factor-β (TGF-β),Platelet-derived growth factor (PDGF)-BBともにCOL gel contractionを促進した。TGF-β刺激によるgel contractionのレベルはMCのα1β1IG発現増加レベルと相関し,α1,β1IG機能阻害抗体によりcontraction作用は著明に減少した。PDGF-BBによる亢進はα1β1IG発現に影響しないものの,α1β1IG機能阻害によりgel contractionはほぽ消失した。TGF-βはα1β1IGを介するMCの細胞接着能を亢進させるが,遊走能には影響しなかった。一方,PDGF-BBは細胞接着能には関与せず,α1β1IGを介する遊走能を上昇させた。高α1β1IG発現MCクローンによるgel contractionは,コントロールクローンに比し亢進した。以上より,MCよるCOL基質リモデリングはα1β1IG発現・機能に依存して行われていることが判明した。TGF-βはα1β1-IG発現増加によるECM接着能亢進により,PDGF-BBはα1β1IG機能に依存する遊走活性を増強させることにより腎炎におけるメサンギウム基質の病的なリモデリング (硬化) に関与することが示唆された。
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© 1999 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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