抄録
IgA腎症における糸球体メサンギウム基質へのIgA沈着機序は不明である。我々はこれまで,IgA結合性のフィブロネクチン (FN) 断片化物を含むFNのカテプシンD処理物とIgAの混合物を,FNの細胞外基質への取り込みを検討する条件下で処理すると,IgAが細胞外基質に沈着することを報告した。今回,10例の患者由来IgAを同様の条件で処理し培養ヒト線維芽細胞細胞外基質に沈着するか,この沈着にはFNがかかわっているかを検討した。患者検体全例で小塊状,線維状のIgA沈着を認めた。添加検体を抗ヒトフィブロネクチン抗体で前処理するとIgA沈着は減弱あるいは消失した。FN断片化物を加えると患者においてIgA小塊物の増多,拡大,新規線維状沈着物の形成が見られた。血清IgA添加を2回繰り返すと患者においてのみ沈着物の増多が見られた。以上から,IgA腎症患者に見られるIgAはFNを介した細胞外基質沈着性を有することが示唆された。