抄録
学校検尿で血尿蛋白尿を指摘され,光顕検査で,びまん性メサンギウム増殖性腎炎を示すIgA腎症の11歳女児に,2ケ月間隔で3つの異なる治療を行った。第1段階はヘパリン療法とメチルプレドニゾロン大量療法,第2段階はプレドニゾロン,ミゾリビンに抗凝固療法を併用したカクテル療法,第3段階はプレドニゾロン,シクロスポリンAに抗凝固療法を併用したカクテル療法であった。各治療段階での尿蛋白減少効果を,1日尿蛋白量と早朝尿蛋白定量/尿中クレアチニン比で評価した。その結果第3段階では,尿蛋白量の有意な減少が認められた。急速に尿蛋白量が減少したことは,シクロスポリンAには,強力な免疫抑制作用だけではなく,腎糸球体における基底膜傷害の修復作用あるいは上皮細胞の機能改善作用があることが示唆された。