日本小児腎臓病学会雑誌
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14 巻, 1 号
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原著
  • 宮村 正和, 及川 剛, 臼井 信男, 勝沼 俊雄, 斎藤 博久
    2001 年 14 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     微小変化型ネフローゼ症候群 (MCNS) の成因として末梢血リンパ球を中心とした免疫調節異常が推測されている。MCNSの約97%はステロイドが著効するが3%程はステロイド抵抗性を示す。ステロイド剤は標的細胞内のグルココルチコイドレセプター (GCR) を介して免疫調節などの作用を発現する。そこで我々は小児特発性ネフローゼ症候群 (INS) の発症および抵抗性に対するGCRの関与について,末梢血単核球の核内に移行したGCRをゲル移動度シフト法 (EMSA) により半定量的に測定する事により評価した。小児INS患者8例と対照群4例との比較ではGCRバンドの発現の明らかな差異は認めず,INSの発症にGCRが直接関与している可能性は少ないと考えられた。しかしMCNS患者のステロイド投与前後での比較では,投与後にGCRバンドの発現増強を認め,GCRが蛋白尿陰性化に関与している可能性が考えられた。
総説
  • 島田 憲次, 松本 富美
    2001 年 14 巻 1 号 p. 5-9
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     腎尿路超音波スクリーニングの普及により,周産期に発見される先天性水腎症が増加している。無症候性に発見されるこのような水腎症に対する診断法と治療方針に関しては,残念ながら一定の基準が定められてはおらず,いまだに議論が続いている。これには無症候性水腎症の自然経過に不明な点が多いことや,尿路通過障害の判定に絶対的な評価方法が確立されていないこと,などが原因になっている。水腎症の手術適応を評価するために最も一般的に用いられている検査法は利尿レノグラフィーであり,レノグラムカーブから判定する方法と,患側腎機能をもって手術適応を決める考え方がみられるが,それらの評価にあたっては検査法のpitfallをよく知っておかねばならない。私たちの施設における腎盂形成術後の評価では,超音波診断上の水腎の改善と,利尿レノグラム上の排泄パターンの改善は全例に認められたが,患側腎機能が有意に改善したのは全体の1/3のみであった。
  • 大友 義之, 金子 一成, 福田 豊, 宮野 武, 山城 雄一郎
    2001 年 14 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     一次性膀胱尿管逆流症 (VUR) 患児78例のアンギオテンシン転換酵素 (ACE) の遺伝子多型の検討と腎機能の評価を行った。DD型を有する患児で有意に腎機能の低下 (GFRの低下等) を認めた。対象患児の中には,両側性の矮小腎を来した症例は無かったが,一側性の矮小腎は24例に見られた。DMSAと造影MRIの解析より,うち,3例は反復性尿路感染に基づく萎縮腎と考えられたが,残りの21例は,先天的な矮小腎 (低形成/異形成による) と考えられた。DD型10例のうち,7例が先天的な矮小腎を有していたと考えられ,VURにしばしば合併する萎小腎の成因にACEの遺伝子多型が関与している可能性が示唆された。
  • 服部 元史, 鈴木 俊明, 伊藤 克己
    2001 年 14 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     Cellular lesionは,細胞性半月体と見誤るような上皮細胞の腫大・変性・増生像 (pseudo-crescentとも呼ばれる) と,対応する係蹄の虚脱傾向や係蹄内へのマクロファージの浸潤・集積を特徴とし,原発性FSGSの組織学的バリアントの一つと考えられている。本稿ではcellular lesionの病理像の特徴とその臨床病理学的意義ついて自施設でのデータを含めて概説した。
原著
  • 原田 直美, 岡田 満, 日野 聡, Wakako Satou, 竹村 司, 吉岡 加寿夫
    2001 年 14 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     私達は月経に関連して蛋白尿を繰り返し,その後再発したネフローゼ症候群の14歳女性を経験した。患者は4歳時にフローゼ症候群を発症し,頻回の再発を繰り返していた。平成8年からは,シクロスポリン療法にて寛解が維持されていた。しかし初潮が始まる同時期に蛋白尿が出現した。1日尿蛋白量は3.1g認めたが,シクロスポリン療法を変更することなく経過を観察したところ,月経終了後10日目に蛋白尿は消失した。以後も月経前後に蛋白尿を繰り返し,その後にネフローゼ症候群の再発を認めた。月経が蛋白尿の出現や再発に関連したと考えられた。
  • 神田 貴行, 三浦 真澄, 嘉戸 摂, 岡田 晋一, 深澤 哲, 宇都宮 靖, 笠置 綱清, 神崎 晋
    2001 年 14 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     私たちは,MPO-ANCA関連腎炎の病初期の経過を知る上で貴重と思われる症例を経験したので報告した。症例は15歳男児で,7歳のとき学校検尿で蛋白尿と血尿を指摘されたが,9歳から尿所見は正常化していた。平成11年4月 (13歳) の時に学校検尿で再び同様の異常を指摘され当科に紹介された。初回腎生検では5個の糸球体のうち1個に分節性硬化像を認めた。抗血小板剤で経過を見ていたが,平成12年4月より急激に尿蛋白が増加,血清Cr値が上昇した。この時MPO-ANCAが高値であるのに気づかれ,同年5月再腎生検を施行した。その結果7/9個の糸球体に線維細胞性半月体を認め,pauciimmune型半月体形成性糸球体腎炎であった。MPO-ANCA関連腎炎の診断で,ステロイドパルス療法と経口PSL療法でMPO-ANCA値と血清Cr値は低下し,尿所見も改善している。学校検尿で蛋白尿,血尿を指摘された学童では積極的にANCAを測定すべきである。
  • 住本 真一, 葭井 操雄, 西村 実保, 新居 正甫
    2001 年 14 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     われわれは,多彩な症状を呈したアレルギー性紫斑病の9歳,女児例を経験した。患児は,両下肢の紫斑と足部の関節炎を主訴に当科に紹介入院となった。入院後,紫斑と関節炎はしだいに軽快したが,上部消化管出血と出血性膀胱炎を合併し,イレウスと鮮血便を伴い,上半身の著明な皮下浮腫が出現した。また血胸による呼吸困難を併発したが,静注のステロイド剤の投与により,上記の症状は軽快した。しかし,しかし,多発性の尿路結石と水腎症とネフローゼ化した腎炎を併発した。ステロイドの大量内服により,しだいに蛋白尿が消失し,腎機能低下も認めず,約半年後にステロイドを中止できた。後日施行した腎生検では,光顕で糸球体にメサンギウム細胞の増殖は認めるものの,半月体形成も硬化像も認めなかった。現在,発症約2年であるが,ジピリダモール内服のみで一般状態は良好で,微少血尿 (-~1+) と結石を左腎盂に1つ認めるのみである。
  • 新居見 和彦, 津留 徳, 井手 健
    2001 年 14 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     1965年Westらの低補体性腎炎報告後,Cameronらが1970年に持続性低補体血症を伴う腎炎にMPGNの名称を提唱した。1977年,WHOにてMPGN type IIをDense Deposit Disease (DDD) として分類された。DDDに関しては多くの報告がなされてきたが,25年以上の長期間にわたり,臨床的・病理学的検討がなされた報告は少ない。今回我々は29年に渡り経過観察し,臨床的にも組織学的にも改善した症例を経験したので報告した。症例は女児。1972年 (6歳時) に肉眼的血尿・ネフローゼ症候群で発症し経過中に低補体血症を呈し,1981年に腎組織学的にDDDと診断した。Prednisolone隔日療法などを行い,現在臨床症状はなく,尿・血液検査にても完全寛解状態である。1976~1992年までに4度腎生検を行い,4回目の腎生検光顕所見にて増殖所見の改善と電顕像にてintramembranous depositの “dropping off” と新たな基底膜を認めた。
  • —症例を用いた臨床研究の試み—
    清 保博, 佐藤 さくら, 永迫 博信, 佐藤 潤一郎, 尾上 泰弘, 西口 俊裕, 浜田 恵亮, 久野 敏, 竹林 茂夫
    2001 年 14 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     学校検尿で血尿蛋白尿を指摘され,光顕検査で,びまん性メサンギウム増殖性腎炎を示すIgA腎症の11歳女児に,2ケ月間隔で3つの異なる治療を行った。第1段階はヘパリン療法とメチルプレドニゾロン大量療法,第2段階はプレドニゾロン,ミゾリビンに抗凝固療法を併用したカクテル療法,第3段階はプレドニゾロン,シクロスポリンAに抗凝固療法を併用したカクテル療法であった。各治療段階での尿蛋白減少効果を,1日尿蛋白量と早朝尿蛋白定量/尿中クレアチニン比で評価した。その結果第3段階では,尿蛋白量の有意な減少が認められた。急速に尿蛋白量が減少したことは,シクロスポリンAには,強力な免疫抑制作用だけではなく,腎糸球体における基底膜傷害の修復作用あるいは上皮細胞の機能改善作用があることが示唆された。
  • 佐伯 敏亮, 横田 隆夫, 小泉 友喜彦, 飯高 喜久雄
    2001 年 14 巻 1 号 p. 51-56
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     日齢86の川崎病の男児にガンマ (γ-) グロブリン大量療法を施行したが症状の再燃を示した。γ-グロブリンを追加投与したところ原病の症状や炎症反応は速やかに軽快したが,投与終了直前より肉眼的血尿および蛋白尿を呈した。川崎病ではしばしば軽度の蛋白尿や白血球尿を認めるが,これまで同様の報告はほとんどみられず,γ-グロブリンが何らかの形で病態にかかわった可能性があると考えられた。しかし,その成因については今後さらなる検討が必要と考えられた。
  • 土屋 久美, 金子 一成, 長岡 理恵子, 大友 義之, 山城 雄一郎, 山高 篤行, 宮野 武
    2001 年 14 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     黄色肉芽腫性腎盂腎炎 (Xanthogranulomatous pyelonephritis; 以下,本症) は慢性腎盂腎炎の特殊型で,小児にはまれとされているが,今回私どもは,3例の本症小児例を経験した。
     そこで,その臨床経過・画像検査所見を詳細に検討したところ,以下の特徴を認めた。(1) 当初は急性腎盂腎炎に合致する臨床経過・検査所見であった,(2) 抗生剤に対する反応が不良で,発熱や炎症反応が2週間以上持続した,(3) 発症2週目以降の超音波検査で腎腫瘤を認めた,(4) 他の腎腫瘤との鑑別にはCT,MRIおよび腎シンチグラフィーが有用であった,(5) 2例で尿路結石の合併を認めた,(6) 2例で腎摘出術,1例で腫瘤摘出術を行い経過は良好であった。
     以上より小児においても経過の遷延する尿路感染症では,本症を念頭におき積極的に画像検査を行うことが早期診断につながるものと思われた。
  • —治療経過と病理組織学的変化について—
    福島 愛, 田中 泰樹, 星名 哲, 藤中 秀彦, 早川 広史, 富沢 修一
    2001 年 14 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     学校検尿を契機に見いだされた特発性膜性腎症の男児例を経験した。ネフローゼ症候群を呈していたため,抗血小板剤,抗凝固剤,ステロイド剤投与を行い,4ケ月後には寛解した。治療方針決定のため9ケ月後に再生検を施行し,Ehrenreich & ChurgのStage IIからIVへの変化を確認した。従来の成人での報告に対し,比較的短期間での基底膜変化があったとみられた。特発性膜性腎症は,自然寛解のある一方で,ネフローゼ症候群を呈するもの,わずかだが腎機能低下に至るものまで存在する。さらに再発・再燃を念頭に置く必要がある。このため現在も治療の是非について一致した見解がみられない。今後,本疾患について臨床経過とともに病理組織学的変化について報告を重ねることが治療と予後の確立に重要と考えられた。
  • 田中 恭子, 牛嶋 正, 古瀬 昭夫
    2001 年 14 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2001/04/30
    公開日: 2008/06/20
    ジャーナル フリー
     急性腎不全を呈した溶連菌感染後急性糸球体腎炎 (PSAGN) の14歳男児例を経験した。急性腎不全にいたった要因として,急性期の水分管理や安静度,年齢,先行感染などの関与が考えられた。急性腎不全を呈し,腎機能障害が遷延したことから腎生検を行った。光顕では管内増殖性糸球体腎炎であり,蛍光抗体法ではC3の腎糸球体末梢血管係蹄の顆粒状沈着,電顕ではhumpおよびアポトーシスが認められた。アポトーシスは急性糸球体腎炎において細胞増殖後の正常細胞数への修復に関与していると考えられており,我々が認めた所見もPSAGNの治癒過程の一端をとらえたものと思われる。
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