抄録
乳児期に末期腎不全に至った若年性ネフロン癆 (JN) の1男児例を経験した。症例は3ヵ月の男児で,哺乳力不良,呼吸困難が出現し心エコー検査で肥大型心筋症と診断された。抗心不全療法により全身状態は改善したが腎機能障害が進行し,生後7ヵ月の時点で腹膜透析が導入され,開放腎生検の所見から乳児型JNと診断された。JNは予後不良の遺伝性腎疾患であるが,一般に末期腎不全への進行は思春期前後とされる。一方,乳児期に短期間で末期腎不全へ進行する症例も報告されており乳児型ネフロン癆: infantile nephronophthisis (IN) と呼称されているが本邦での報告は極めて少なく,本症例は第4例目である。INではさまざまな全身合併症が報告されているが,肥大型心筋症の報告は検索した範囲では1例のみであった。本症例では腎不全よりも肥大型心筋症による心不全が先行発症していることから,肥大型心筋症もINに伴う合併症の一つである可能性が示された。