日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
IgA腎炎のIgA subclassと補体活性化の関係
久野 敏竹林 茂夫岩崎 宏松下 操藤田 禎三
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キーワード: IgA腎炎
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2003 年 16 巻 1 号 p. 15-20

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抄録
 IgA腎炎ではメサンジウムのIgA1沈着が補体活性系の副経路を活性化し,IgA2沈着がレクチン経路を活性化することを我々は報告した。我々はこの関係の再現性と臨床病理学的関係を検討した。2回腎生検を行った26例を対象とした。凍結切片でIgG,IgA,IgM,C1q,C3c,C4の沈着を蛍光抗体法で観察し,IgA1,IgA2,factor B,Mannose binding lectin (MBL),MBL-associated protease-1 (MASP-1) の沈着を酵素抗体法で観察した。初回の腎組織でメサンジウムにIgA1とIgA2の両方が陽性であった11例ではC3c,C4,factor B,MBL/MASP-1が陽性で,IgA1のみが陽性であった15例ではfactor Bは全例に陽性,C3cは13例に陽性であったが,C4,MBL/MASP-1は陰性であった。IgA2とMBL/MASP-1は同じ局在を示した。初回の腎組織でIgA1とIgA2の両方が陽性であった症例では2回目の組織でもIgA1,IgA2,C3c,factor B,MBL/MASP-1が陽性でC4は2例が陰性になっていた。初回の腎組織でIgA1のみが陽性であった症例のうち,4例が2回目の組織でIgA1,IgA2,C3c,C4,factor B,MBL/MASP-1が陽性になっていた。2回目の生検時,IgA1のみが陽性であった症例の蛋白尿はIgA1とIgA2の両方が陽性であった症例に比較して有意に少なかった。しかし,腎組織の光顕所見の重症度および予後はIgA2陽性の有無に関係なかった。今回の結果よりIgA腎炎ではIgA1沈着が副経路を活性化し,IgA2沈着がレクチン経路を活性化することを再確認できた。IgA1とIgA2の両方が沈着するIgA腎炎ではIgA1が沈着した後にIgA2が沈着し,レクチン経路を活性化し,蛋白尿が遷延することが示唆された。
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© 2003 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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