日本小児腎臓病学会雑誌
Online ISSN : 1881-3933
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16 巻, 1 号
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原著
  • 塩沢 裕介, 大野 綾子, 坂口 佐知, 青柳 陽, 佐藤 弥生, 斉藤 俊, 角張 綾子, 大山 昇一, 大瀧 理佐子
    2003 年 16 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2003/04/30
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
     小児の急性糸球体腎炎は一般に予後良好とされるが,急性腎不全や心不全,高血圧性脳症などで致死的経過をとることもある。
     今回我々は,急性糸球体腎炎に合併した高血圧性脳症によりけいれん重積をきたした症例を経験した。本症例においては,静注用降圧剤ニカルジピンの持続投与によって速やかな降圧が得られ,後遺症なく治癒した。また画像検査では頭部MRIが病変の経時的変化を評価する上で有用であった。
     したがって,小児のけいれんの原因の一つとして高血圧性脳症を念頭におくべきであること,本症を疑った場合,頭部MRIが早期診断に有用であること,高血圧緊急症においてはニカルジピンが小児においても安全かつ有効な降圧剤で第一選択の一つとなりうると思われた。
  • 和合 正邦, 林 知宏, 藤田 篤史, 河村 隆, 林 雄三
    2003 年 16 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
     頻回再発型ネフローゼ症候群を呈したClq nephropathyの1例を経験した。症例は7歳男児。平成11年5月(4歳時)ネフローゼ症候群を発症し,平成13年後半以降頻回再発型臨床像を呈した。平成14年5月(7歳時)の腎生検で,メサンギウム領域にわずかな細胞増殖を認めた。蛍光抗体法でClqがメサンギウム領域を中心に最も強く染まり,IgG,フィブリノーゲンが軽度陽性を示し,Clq nephropathyと診断した。本症は比較的希な疾患であり,頻回再発型ネフローゼ症候群を呈した本症についての報告は極めて少なく,貴重な症例と考えられたので報告した。
  • 久野 敏, 竹林 茂夫, 岩崎 宏, 松下 操, 藤田 禎三
    2003 年 16 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
     IgA腎炎ではメサンジウムのIgA1沈着が補体活性系の副経路を活性化し,IgA2沈着がレクチン経路を活性化することを我々は報告した。我々はこの関係の再現性と臨床病理学的関係を検討した。2回腎生検を行った26例を対象とした。凍結切片でIgG,IgA,IgM,C1q,C3c,C4の沈着を蛍光抗体法で観察し,IgA1,IgA2,factor B,Mannose binding lectin (MBL),MBL-associated protease-1 (MASP-1) の沈着を酵素抗体法で観察した。初回の腎組織でメサンジウムにIgA1とIgA2の両方が陽性であった11例ではC3c,C4,factor B,MBL/MASP-1が陽性で,IgA1のみが陽性であった15例ではfactor Bは全例に陽性,C3cは13例に陽性であったが,C4,MBL/MASP-1は陰性であった。IgA2とMBL/MASP-1は同じ局在を示した。初回の腎組織でIgA1とIgA2の両方が陽性であった症例では2回目の組織でもIgA1,IgA2,C3c,factor B,MBL/MASP-1が陽性でC4は2例が陰性になっていた。初回の腎組織でIgA1のみが陽性であった症例のうち,4例が2回目の組織でIgA1,IgA2,C3c,C4,factor B,MBL/MASP-1が陽性になっていた。2回目の生検時,IgA1のみが陽性であった症例の蛋白尿はIgA1とIgA2の両方が陽性であった症例に比較して有意に少なかった。しかし,腎組織の光顕所見の重症度および予後はIgA2陽性の有無に関係なかった。今回の結果よりIgA腎炎ではIgA1沈着が副経路を活性化し,IgA2沈着がレクチン経路を活性化することを再確認できた。IgA1とIgA2の両方が沈着するIgA腎炎ではIgA1が沈着した後にIgA2が沈着し,レクチン経路を活性化し,蛋白尿が遷延することが示唆された。
  • 島田 憲次, 東田 章, 松本 富美
    2003 年 16 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
     急性腎不全を呈した生後21日女児の両側先天性水症に対する治療経過を報告した。胎児期,出生後の超音波所見から緊急的に拡張が高度の右腎に腎瘻を留置したが,期待した腎機能の改善は得られなかった。このためRIレノグラムによる分腎機能評価を加えたところ,予想に反して拡張が少ない左腎にuptakeが多く認められ,左側にも腎瘻を留置した。その後腎機能は順調に回復し,両側の腎盂形成術が加えられた。腎後生急性腎不全の分腎機能はレノグラムによる評価が有用なことを強調した。
  • 藤田 尚代, 長田 道夫, 金本 勝義, 福田 恵一, 大森 さゆ, 飛騨 麻里子, 粟津 緑
    2003 年 16 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
     多嚢胞性異形成腎の嚢胞,異形成上皮ではp38MAPキナーゼ(p38)の発現・活性が増加している。また異形成腎には尿路閉塞が高率に合併する。本研究は尿路閉塞の流体力学的変化を尿管芽細胞周期的伸展によりin vitroで再現し,p38活性および異形成上皮に特徴的な細胞増殖,Pax2,TGF-β1発現への影響を検討した。p38は周期的伸展により時間依存性に活性化された。BrdU取込みは24時間伸展で有意に増加したが、p38阻害剤SB203580存在下では抑制された。Pax2蛋白発現も時間依存性に増加したが,p38阻害により対照と同レベルに抑制された。培養上清TGF-β1蛋白は24時間周期的伸展では変化せず,p38阻害にも影響されなかった。以上,周期的伸展は尿管芽細胞においてp38活性化を介した細胞増殖およびPax2発現を誘導した。p38の活性化が胎児期尿路閉塞による嚢胞形成に関与する可能性が考えられる。
  • 齋藤 陽, 神山 智恵子, 土井 啓司, 生駒 雅昭, 小板橋 靖
    2003 年 16 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 2003/04/15
    公開日: 2007/12/28
    ジャーナル フリー
     小児腎疾患において,糸球体腎炎の活動性を尿中単球/マクロファージ(Mo/MΦ)を定量的に測定することで指標となりうるか検討した。対象は溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSAGN)2例,紫斑病性腎炎(HSPN)1例,IgA腎症(IgAN)2例,膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)1例であった。方法は,抗CD68モノクローナル抗体を使用しCD68陽性単球/マクロファージ(CD68+ Mo/MΦ)として測定した。いずれの症例においても治療前(活動期)と治療後(非活動期)に亘って尿中Mo/MΦの測定を行った。無治療経過観察群(PSAGN,HSPN)およびステロイド投与群(IgAN,MPGN)ともに活動期では非活動期に比べ,尿中CD68陽性単球/マクロファージ数(CD68+ Mo/MΦ)は有意に高値であった。
     以上から,尿中Mo/MΦ数は増殖性糸球体腎炎の臨床的活動性の指標になることが示唆された。
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