日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
溶血性尿毒症症候群発症8年後より高度蛋白尿を呈し, 糸球体硬化および著明な間質の線維化を認めた1例
橋村 裕也野津 寛大忍頂寺 毅史貝藤 裕史中西 浩一吉川 徳茂飯島 一誠松尾 雅文
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2009 年 22 巻 2 号 p. 183-187

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抄録

 今回われわれは,HUS発症8年後より高度蛋白尿を呈し,発症11年後の腎生検で糸球体硬化および著明な間質の線維化を認めた症例を経験したので報告する。
 症例は14歳女性。3歳時に溶血性尿毒症症候群 (HUS) を発症し,約1ヵ月間の腹膜透析治療を要した。透析終了後,尿蛋白は陰性化したが尿中β2MGの高値が持続したため腎生検を行ったところ,腎組織の一部に瘢痕化を認め,急性期での皮質壊死の存在が示唆された。その後,アンギオテンシン変換酵素阻害薬 (ACEI) の内服を開始し尿所見は正常化した。しかし,発症から8年後より高度尿蛋白が出現し,再度腎生検を行ったところ,糸球体硬化および著明な間質の線維化を認め今後の腎機能障害への進行が予想された。本症例のようにHUSの急性期に長期間人工透析を行い,また,尿異常が遷延する症例は,後遺症の発症率が高いと報告されているために,予後に十分な注意を払うべきである。

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© 2009 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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