日本小児腎臓病学会雑誌
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原著
一次性膀胱尿管逆流症425症例におけるgrade別のbreakthrough infectionの検討
山川 聡上村 治永井 琢人日比 喜子山崎 靖人山本 雅紀中野 優笠原 克明谷風 三郎吉野 薫渡邉 仁人
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2011 年 24 巻 1 号 p. 19-26

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抄録

 当施設での一次性膀胱尿管逆流症 (VUR) 症例のbreakthrough infectionについて後方視的に検討した。排尿時膀胱尿道造影でVURを証明された626例の内,神経因性膀胱や後部尿道弁などの下部尿路疾患を除いた一次性VUR425例 (男/女: 281/144,両側/片側: 229/196) を対象とした。経過中最大のVUR grade別 (両側の場合はgradeの高いほうで分類) に分けると,I/II/III/IV/V: 33/64/99/131/98例であった。breakthrough infectionを起こしたのは425例中90例 (21.2%) であり,感染回数別の症例数はそれぞれ1回/2回/3回/4回/5回: 50/25/8/6/1例であった。各grade別のbreakthrough infection発症症例数および率は,それぞれI/II/III/IV/V: 0/33例 (0%)/3/64例 (4.7%)/15/99例 (15.2%)/44/131例 (33.6%)/28/98例 (28.6%) であった。VURのgradeが大きいとbreakthrough infectionの回数が多かった (p<0.01)。なお,VUR grade IIとIIIの間に有意差はなく,VUR grade IIIとIVの間では,p値=0.015(<0.05) と有意差を認めた。このことより,grade I~IIIとIV~V (高度VUR群) の2群に分けて検討すると,breakthrough infection発症症例数および率は,それぞれ18/196例 (9.2%),72/229例 (31.4%) と有意水準p<0.001で高度VUR群が高率にbreakthrough infectionを起こした。さらに,この2群とbreakthrough infection回数 (1回以下と複数回) との間でχ2検定を行うとp<0.001と有意差があり,高度VUR群で有意に複数回のbreakthroughが起こりやすいことが分かった。

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© 2011 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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