抄録
症例は19歳女性。新生児期,腸回転異常症に対し空腸回腸吻合術が施行され,残存小腸6cmの短腸症候群を生じたため,乳児期より在宅中心静脈栄養管理が行われていた。19歳時に全身倦怠感と浮腫,蛋白尿・血尿,低補体血症が出現し,腎生検により膜性増殖性糸球体腎炎と診断された。本腎炎に対するステロイド隔日治療開始にあたり,短腸症候群による吸収障害を考慮し,一定期間プレドニゾロン (PSL) 経静脈投与を施行後,内服投与に変更した。吸収効率を評価するために測定した尿中遊離コルチゾール値は,投与日にPSLとの交差を反映し高値を,非投与日に副腎皮質機能抑制により低値を示し,その変動パターンには投与法による差異が認められなかった。以上から短腸症候群を有する本症例においては,経口PSL治療が可能であると判断した。また,内因性ステロイドホルモン分泌の指標となる尿中遊離コルチゾール測定は,ステロイド治療中の副腎機能評価に有用であると考えられた。