日本小児腎臓病学会雑誌
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24 巻, 2 号
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原著
  • 青木 孝浩, 平本 龍吾, 江口 広宣, 松本 真輔, 小森 功夫, 秋草 文四郎
    2011 年24 巻2 号 p. 175-178
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     当院では1997年1月から2010年6月に腎生検にて確定診断された小児特発性膜性腎症9例を経験した。当院では尿蛋白1g/day以上を呈した症例でまずステロイド治療を行う方針としている。その治療と臨床経過を後方視的に検討した。3例が尿蛋白1g/day以上で,うち1例がネフローゼ症候群の診断基準を満たした。その3例で2~3か月間のステロイド投与を行い,治療開始から2か月で尿蛋白が消失した。他6例はジピリダモールやACE阻害薬,ARBのみにより経過観察され,全例で寛解を認めたが,尿蛋白消失まで5か月から7年3か月を要した。2か月間のステロイド治療により寛解までの期間を短縮させることが期待できると思われた。
  • 亀井 宏一, 宮園 明典, 佐藤 舞, 石川 智朗, 藤丸 拓也, 小椋 雅夫, 伊藤 秀一
    2011 年24 巻2 号 p. 179-186
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     免疫抑制薬内服患者への生ワクチン接種は添付文書上では禁忌とされている。しかしながら,免疫抑制薬内服患者はウイルス感染症で致命的となるリスクが高く,接種が望ましいという意見もあり,予防接種ガイドラインでは禁忌にはなっていない。今回われわれは,免疫抑制薬内服中で,麻疹・風疹・水痘・おたふくかぜについて酵素抗体法で (-) か (±) を示した腎疾患または膠原病患者に,当院倫理委員会承認後に患者毎に十分な説明を行い,生ワクチン接種を行い,抗体獲得率と有害事象について前向きに検討した。40名 (1~24歳) に,55接種 (MRワクチン22接種,水痘ワクチン18接種,おたふくかぜワクチン15接種) 施行した。抗体獲得率は,麻疹 (90%) と風疹 (93%) は高く,水痘 (44%) およびおたふくかぜ (43%) は低かった。2名に発熱,1名に発疹,1名にネフローゼの再発を認めたが,重篤な有害事象はなかった。免疫抑制薬内服中でも生ワクチン接種が有効である可能性が示唆された。
総説
  • -新たな蛋白尿治療戦略の開発に向けて-
    神田 祥一郎, 張田 豊
    2011 年24 巻2 号 p. 187-197
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     Ca2+はさまざまな細胞応答において重要な役割を果たしている一方で,細胞内Ca2+濃度の時間空間的な制御異常は細胞障害,細胞死を引き起こす。糸球体上皮細胞 (Podocyte) は糸球体濾過バリアとして必須の役割を担っているが,この細胞に発現するCa2+チャネルの異常により蛋白尿を生じることなどからCa2+シグナル異常がpodocyteの形態変化を引き起こすことが明らかになってきた。
     AngiotensinIIはpodocyteに対して直接作用し,この細胞の生存,形態の維持に関与している。その機序としてAngiotensinII受容体刺激の下流でTRPC6を介した細胞内へのCa2+の流入と,その結果としてcalcineurin-NFAT経路の活性化が明らかになってきた。podocyteにおけるCa2+シグナルについて概説し,その修飾による蛋白尿治療の可能性について議論する。
  • 櫻谷 浩志, 平野 大志, 藤永 周一郎, 遠藤 周, 渡邊 常樹, 染谷 朋之介, 大友 義之, 清水 俊明
    2011 年24 巻2 号 p. 198-203
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群 (SRNS) の予後は,メチルプレドニゾロンパルス療法 (MPT) およびシクロスポリン (CsA) をはじめとする種々の免疫抑制剤の導入によって劇的に改善された。しかし,これらの治療にも反応せず末期腎不全に陥る難治性SRNSも存在しており,このような症例に対する新たな治療法の開発が望まれている。リツキシマブはB細胞表面に発現する分化抗原CD20に対するモノクローナル抗体であるが,近年,難治性NS患者に対する新規治療薬として世界的に注目を集めている。今回われわれは,過去に報告されたSRNSに対するリツキシマブ療法の8報告 (多施設共同研究2編,症例報告6編),ならびに自験例を検討し,リツキシマブ療法の現状と問題点を述べる。
  • 上田 博章, 秋岡 祐子, 本多 貴実子, 菅原 典子, 藤井 寛, 近本 裕子, 服部 元史
    2011 年24 巻2 号 p. 204-208
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     グランザイムB (GrB) は,パーフォリンとともに標的細胞に入りアポトーシスを起こすintracellulerな障害機序が報告されてきた。最近,パーフォリンを介さないGrBのextracellulerな障害機序が注目されている。今回,小児特発性ネフローゼ症候群の病態におけるGrBの関与について,ステロイド感受性NS (SSNS),ステロイド抵抗性NS (SRNS) における末梢血単核球中のCD3,CD4,CD8,CD19,CD56陽性細胞のGrB発現をフローサイトメトリーで検討した。その結果,SRNSはSSNSに比して,GrB陽性CD3陽性T細胞の比率が有意に高率であった。GrBのextracellularな障害機序として,ラミニンなどの細胞外基質を障害して細胞剥離を機序とした細胞死を導くとことが報告されていることから,SRNSの病態にT細胞におけるグランザイムBのextracellularな糸球体障害機序 (基底膜障害と引き続く内皮・上皮細胞剥離) が関与している可能性が推測された。
症例報告
  • -OCRL-1遺伝子解析と20年の臨床経過-
    辻 祐一郎, 村田 敬寛, 渡辺 博, 新保 敏和, 石黒 精, 島津 光伸
    2011 年24 巻2 号 p. 211-217
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     Lowe症候群の1症例について遺伝子解析を施行し,その後,長期に経過観察しえたので報告する。患児には,成長障害,先天性白内障,精神運動発達遅滞,近位尿細管機能障害,骨密度の低下などを認めLowe症候群と診断した。その後,家族歴の聴取を行い,親族を含めた遺伝子検索を施行した。その結果,本症の責任遺伝子であるOCRL-1遺伝子に新しい変異を見出した。患児は現在20歳であるが,低身長,精神発達遅滞,腎機能障害の進行などを認めているものの,比較的自立した生活を送っている。
  • 橋本 多恵子, 豊田 健太郎, 荻野 大助, 松永 明, 早坂 清
    2011 年24 巻2 号 p. 218-223
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     リポ蛋白糸球体症 (LPG) は,APOEの遺伝子変異が主因とされる遺伝性腎疾患である。山形県で2例目の小児例を経験し治療を試みたので考察を加え報告する。
     症例は7歳女児。学校検尿で蛋白尿を指摘され,高度蛋白尿が続き腎生検を施行した。観察糸球体10個中,半数以上に糸球体毛細血管の拡張と血栓様の塞栓物質の形成を認めた。遺伝子解析によりAPOE-Sendai (Arg145Pro) 変異のヘテロ接合体によるLPGと診断した。フィブラート系の抗高脂血症薬を中心とした内服治療で尿所見が改善し経過良好である。
     本疾患は予後不良とされてきたが,近年フィブラートを中心とした抗高脂血症薬の有効性が明らかになり早期発見・早期治療が望まれる。また,LPG患者の家系内にはAPOE遺伝子変異を有していても,尿所見のない変異APOE保因者がおり,発症には他の要因の関与が示唆される。今後の病態解明への取り組みが必要である。
  • 石川 真紀子, 清水 順也, 金谷 誠久, 白神 浩史, 久保 俊英, 中原 康雄, 後藤 隆文
    2011 年24 巻2 号 p. 224-229
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     シスチン尿症は腎尿細管,小腸上皮におけるシスチンと二塩基性アミノ酸の吸収障害を本態とする疾患であり,尿路結石の頻回再発やそれに伴う腎不全への進展が問題となる。症例は,結石分析,尿中アミノ酸分析にてシスチン尿症と診断し,重曹による尿アルカリ化治療を行っていた2歳男児である。定期受診時に,顕微鏡的血尿と,超音波および腹部CTにて左水腎水尿管と左膀胱尿管移行部に巨大結石を認めた。体外衝撃波結石破砕術は適応外と判断し,開腹にて尿路結石除去術を施行し,術後は十分な尿量確保と尿アルカリ化の継続,シスチン易溶化薬剤の内服を開始した。シスチン尿症の管理においては尿路結石の再発予防が最も重要となるが,乳幼児期での十分な尿量確保や蛋白制限は困難なことが多い。本症例を通してシスチン尿症の適切な管理法について考察し報告する。
  • 田村 啓成, 野口 篤子, 高橋 郁子, 土田 聡子, 高橋 勉
    2011 年24 巻2 号 p. 230-235
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     アムロジピンを含むジヒドロピリジン系のカルシウムチャネルブロッカー (CCB) は以前より腹膜透析中の乳糜腹水との関連が指摘され,また同じジヒドロピリジン系CCBのマニジピンにより著明な乳糜腹水を生じた全身性エリテマトーデス (SLE) の報告も存在する。われわれはSLEの経過中にアムロジピンの関与が疑われる腹水貯留を来した症例を経験した。アムロジピン開始10日頃より腹水を生じた本症例は同剤中止後,約3週間で腹水が消失し,腹水発症とアムロジピンとの関連性を推測させた。腹水発症の機序としてCCBによる腹膜血管/リンパ管平滑筋への拡張作用に加えて,SLEの潜在的な腹膜血管/リンパ管の炎症による透過性亢進が影響したものと推測した。ジヒドロピリジン系CCB使用に際しては副作用として腹水が存在すること,特にSLEでは腹水発症を助長する修飾因子が存在する可能性があることに留意すべきである。
  • 石松 菜那, 大塚 泰史, 岡 政史, 濱崎 雄平, 青木 茂久, 杉本 圭相, 竹村 司
    2011 年24 巻2 号 p. 236-240
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     ネフロン癆は,腎髄質に嚢胞を認め小児期に末期腎不全に至る,稀な常染色体劣性遺伝疾患である。
     症例は8歳女児,気管支喘息で前医に入院時に腎機能障害を指摘され,当科を紹介された。尿検査では低比重尿と尿細管機能障害がみられた。MRIで皮髄境界部に小嚢胞を認め,腎生検では慢性尿細管間質性腎炎が主体の末期腎不全の所見であった。ネフロン癆を考え,責任遺伝子の一つであるNPHP1 (2q 12~13) をPCR (polymerase chain reaction) 法により検索し,欠失が疑われた。そのため高密度SNP (single nucleotide polymorphism) アレイを施行し,NPHP1とMALLの一部を含む欠失を認め,NPHP1のホモ接合欠失によるネフロン癆と診断した。眼科受診にて眼底の色調変化と網膜電図での反応低下がみられたため,Senior-Loken症候群と診断した。ネフロン癆の責任遺伝子や病態は多彩である。本症例ではSNPアレイを行うことでMALLを含むNPHP1のホモ接合欠失を詳細に検討できた。
  • 高橋 弘典, 鈴木 滋, 松尾 公美浩, 棚橋 祐典, 佐々木 聡
    2011 年24 巻2 号 p. 241-245
    発行日: 2011/11/15
    公開日: 2012/10/25
    ジャーナル フリー
     症例は19歳女性。新生児期,腸回転異常症に対し空腸回腸吻合術が施行され,残存小腸6cmの短腸症候群を生じたため,乳児期より在宅中心静脈栄養管理が行われていた。19歳時に全身倦怠感と浮腫,蛋白尿・血尿,低補体血症が出現し,腎生検により膜性増殖性糸球体腎炎と診断された。本腎炎に対するステロイド隔日治療開始にあたり,短腸症候群による吸収障害を考慮し,一定期間プレドニゾロン (PSL) 経静脈投与を施行後,内服投与に変更した。吸収効率を評価するために測定した尿中遊離コルチゾール値は,投与日にPSLとの交差を反映し高値を,非投与日に副腎皮質機能抑制により低値を示し,その変動パターンには投与法による差異が認められなかった。以上から短腸症候群を有する本症例においては,経口PSL治療が可能であると判断した。また,内因性ステロイドホルモン分泌の指標となる尿中遊離コルチゾール測定は,ステロイド治療中の副腎機能評価に有用であると考えられた。
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