日本小児腎臓病学会雑誌
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症例報告
血清Na-Cl=36 からの乖離による酸塩基平衡異常の推測が有用であった2 例
熊谷 直憲工藤 宏紀力石 健中山 真紀子高橋 俊成松木 琢磨木越 隆晶内田 奈生呉 繁夫
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2017 年 30 巻 1 号 p. 68-72

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抄録

血清Na-Cl=36 からの乖離を契機に酸塩基平衡異常が疑われ,血液ガス分析を施行し臨床上有用であった症例を経験した。症例1:3 歳女児。3 か月時に脳腫瘍を発症し集学的治療を受けた。3 歳時に胃腸炎罹患時に低リン血症,低分子蛋白尿,代謝性アシドーシス,くる病から薬剤性Fanconi 症候群と診断された。血清Na-Cl は常に30 以下であり,長期間の代謝性アシドーシスの存在が示唆された。症例2:19 歳女性。9 か月時に横紋筋肉腫を発症し,集学的治療を受けた。治療終了後より血清マグネシウムは緩徐に低下し,19 歳時に低カルシウム血症,低カリウム血症,代謝性アルカローシスと診断された。血清マグネシウムの低下とともに血清Na-Cl は常に40以上であり,長期間の代謝性アルカローシスの存在が示唆された。血液ガス分析を行っていない場合,血清Na-Cl=36 からの乖離により酸塩基平衡異常を推測することは臨床上有用である。

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© 2017 一般社団法人 日本小児腎臓病学会
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